北方領土・樺太・千島列島・勘察加 総合項目目次
~見果てぬ北の大地~
総合論と各個目次
昨年の晩秋以来「勘察加領有の過去があったか否か」の考察を皮切に、北の見果てぬ大地への考察、論件をつらつらと記述し綴続けて来た。
基本的に自分の物心付き、近代史と政治に興味を抱いて卅数余年、南樺太と千島列島は日本領土であるという認識を有して来た。
記述進める内に麻生内閣総理大臣の南樺豊原への衝撃的訪問が2009年2月18日に行われてしまった。激甚たる衝撃で、数日は其無念に胸が押しつぶされる思いであった。
南樺豊原での露大統領との屈辱的会談。大泊郊外女麗に於る昭和19年に平和的にソビエトに返還した北樺太(薩哈嗹)油田「サハリン2」稼働式典への参加。其余りにも祖父吉田茂元首相の桑港会議に於る悲嘆の叫びと掛け離れた姿勢に暗澹たる思いだった。
第二章 領域
第二条【領土権の放棄】
(a)
日本国は、朝鮮の独立を承認して、斉州島、巨文島及び欝陵島を含む朝鮮に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。
(b)
日本国は、台湾及び澎湖諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。
(c)
日本国は、千島列島並びに日本国が千九百五年九月五日のポーツマス条約の結果として主権を獲得した樺太の一部及びこれに近接する諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。
(d)
日本国は、国際連盟の委任統治制度に関連するすべての権利、権原及び請求権を放棄し、且つ、以前に日本国の委任統治の下にあつた太平洋の諸島に信託統治制度を及ぼす千九百四十七年四月二日の国際連合安全保障理事会の行動を受諾する。
(e)
日本国は、日本国民の活動に由来するか又は他に由来するかを問わず、南極地域のいずれの部分に対する権利若しくは権原又はいずれの部分に関する利益についても、すべての請求権を放棄する。
(f)
日本国は、新南諸島及び西沙諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。
第三条【信託統治】
日本国は、北緯二十九度以南の南西諸島(琉球諸島及び大東諸島を含む。)、孀婦(そふ)岩の南の南方諸島(小笠原群島、西ノ島及び火山列島を含む。)並び に沖の鳥島及び南鳥島を合衆国を唯一の施政権者とする信託統治制度の下におくこととする国際連合に対する合衆国のいかなる提案にも同意する。このような提案が行われ且つ可決されるまで、合衆国は、領水を含むこれらの諸島の領域及び住民に対して、行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有 するものとする。
第四条【財産】
(a)
この条の(b)の規定を留保して、日本国及びその国民の財産で第二条に掲げる地域にある もの並びに日本国及びその国民の請求権(債権を含む。)で現にこれらの地域の施政を行つている当局及びそこの住民(法人を含む。)に対するものの処理並びに日本国におけるこれらの当局及び住民の財産日本国及びその国民に対するこれらの当局及び住民の請求権(債権を含む。)の処理は、日本国とこれらの当局と の間の特別取極の主題とする。第二条に掲げる地域にある連合国又はその国民の財産は、まだ返還されていない限り、施政を行つている当局が現状で返還しなければならない。(国民という語は、この条約で用いるときはいつでも、法人を含む。)
(b)
日本国は、第二条及び第三条に掲げる地域のいずれかにある合衆国軍政府により、又はその司令に従つて行われた日本国及びその国民の財産の処理の効力を承認する。
(c)
日本国とこの条約に従つて日本国の支配から除かれる領域とを結ぶ日本所有の海底電線は、二等分され、日本国は、日本の終点施設及びこれに連なる電線の半分を保有し、分離される領域は、残りの電線及びその終点施設を保有する。
該條約は、既に第三條が克服された。
即ち沖縄、小笠原、奄美、沖の鳥島、南鳥島はアメリカによる信託統治を脱却し皇土復帰を成し遂げる事が出来た。アメリカを戦後同盟国として選んだ道故ではあるが、其処に至る迄の政治外交行政の苦難は推し量る事は吝かではない。
如何に同盟国からの返還とは雖も、苦難の道ではあった事は窺えよう。
亦、「権原放棄」ではなく「信託統治」であった事も第二條との差が生じ、問題の複雑化を招いているとも言えるかもしれない。
先見占有権が今も国際的に有効であるならば、本来は第二條 f 項、つまり新南諸島及び西沙諸島も其帰属を主張したい所だが、日華平和條約で中華民国(台湾)に返納した事を受けて、論じえない物と考える。
蛇足かもしれないが、中華歴代王朝、滿洲王朝の清、其後の中華民国は新南諸島及び西沙諸島を先見占有した歴史はない。
当項目に於て、問題は第二條 c 項である。
現日本政府は千島列島と南樺太の権原を放棄した立場を持している。
だが、該條約の調印国を見れば解るように、ソビエト社会主義共和国連邦は調印していないのである。同じく未調印国である中華民国とは先述の様に日華平和條約に於て、第二條の記述 (下記 註:1)に依り其権限放棄の名を以て、其施政権を中華民国に返納した事となる。
<註:1>
日華平和條約
第二条
日本国は、千九百五十一年九月八日にアメリカ合衆国のサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約(以下「サン・フランシスコ条約」という。)第二条に基き、台湾及び澎湖諸島並びに新南諸島及び西沙諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄したことが承認される。
つまり、媾和條約(講和条約)、或は平和條約(平和条約)が日ソ・日露間で締結されていない以上、法的にはソビエト、其後の露西亜とは未だ戦争状態が終結を見ていないのである。
桑港平和條約未調印国であり、戦争終結を謳った媾和・平和條約を締結していないソビエトには南樺太と千島への帰属は認められていないし、一方的に日本が其権原を放棄したのみに留まる物でしかない。
では、国際法的に現在一体何処の国が其施政権を有しているのか。
「露西亜が桑港條約に署名して無いから千島全島・南樺太の領有権は現状、「未確定」になっているが、実は日本が千島全島・南樺太の領有権を今でも所有してる事になっている。
其論拠は何処にあるか。露西亜が正式に千島全島・南樺太の自国領決定は元所有者である日本と領土交渉しないと、永遠に露西亜領有化出来ないと国際司法裁判所で決定されている。
之は国際司法裁判所が領土権・領土交渉には必ず当事国同士、即ち元所有者国・新所有者となる国で、領土交渉をしないと領有権の移行は出来ないと国際司法裁判所が提言している。而も国際司法裁判所が領土交渉に戦争等の條約を持ち出して領土交渉した場合、其交渉は一切、無効だと提言している。
又、当事国同士の領土交渉に第三国が介入した場合も一切、無効だと提言してる。露西亜以外の戦勝国(米・英・仏・支)が介入した場合は、日本は堂々と領土交渉を放棄出来る。
<引用>
日ソ交渉に対する米国覚書 1956年9月7日
領土問題に関しては、先に日本政府に通報した通り、米国は所謂ヤルタ協定なる物は、単に其当事国の当時の首脳者が共通の目標を陳述した文書に過ぎない物と認め、其当事国による何等の最終的決定を成す物でなく、又領土移転の如何なる法律的効果を持つ物でないと認める物である。
桑港平和條約 -此條約はソ連邦が署名を拒否したから同国に対しては何等の権利を付与する物ではないが-は、日本によって放棄された領土の主権帰属を決定しておらず、此 問題は、桑港会議で米国代表が述べた通り、同條約とは別個の国際的解決手段に付せられるべき物として残されている。
何れにしても日本は、同條約で放棄した領土に対する主権を他に引き渡す権利を持っていないのである。
斯様な性質の如何なる行為が為されたとしても、夫は、米国の見解に依れば、桑港條約の署名国を拘束し得る物ではなく、亦同條約署名国は、斯る行為に対しては恐らく同條約に依って与えられた一切の権利を留保する物と推測される。
<引用終>
という文言。
是は日本政府は同條約に於て南樺太・千島全島を放棄したとしても一方の当事国であり未締結国であるソビエトに対しては日本の放棄其物が「留保」される物とアメリカ政府は解釈していると捉えるべき物である。
上記案件を考察する事無くとも、基本的に日本政府が採っている「北方領土」を「固有の領土」論で露西亜と折衝するのは見当違いではないかという考えがある。
歴史的経緯を重視し「固有の領土」を言うのであれば、樺太、千島全島は先見占有権は日本が有し、先見を鑑みれば、勘察加も含まれ得る。
実効支配の歴史的経緯を鑑みれば、樺太は完全に日本領であって然るべきだ。
日本が採るべき道は、数箇條あるも、決して所謂「北方領土」即ち「南千島と北海道付属島嶼」だけでは無い筈なのである。
日本が採るべき道は
本来の歴史的日本版図
全樺太+全千島 (勘察加を加えたいが300年前に侵掠された土地は余りにも難し過ぎよう)
国際條約下の版図
南樺太+千島全島 (千島樺太交換條約+ポーツマス媾和條約+日ソ基本條約)
全樺太主権日本、露西亜人居住・経済活動完全フリーパス+南千島(日露和親條約+樺太島仮規則)
全樺太+南千島 (日露和親條約厳密施行)
妥協下に於る版図
全千島 (千島樺太交換條約)
サンフランシスコ平和会議における吉田茂総理大臣の受諾演説
1951年9月7日
外務省条約局法規課『平和条約の締結に関する調書VII』、118-122頁.
カテゴリー
北方領土・樺太・千島列島・勘察加
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